あったか・えっせい
「あったか・えっせい」は、玉屋の所属する社団法人日本専門店協会が主催す るエッセイコンテストです。全国の店頭に立つ販売員から寄せられたお客様と のふれあいや感動の実話を募ったもので、弊社スタッフが応募したエッセイも数々の賞をいただいております。
「あったか・えっせい」は、玉屋の所属する社団法人日本専門店協会が主催す るエッセイコンテストです。全国の店頭に立つ販売員から寄せられたお客様と のふれあいや感動の実話を募ったもので、弊社スタッフが応募したエッセイも数々の賞をいただいております。
いつも私の気持ちを温かくしてくれるエピソードがあります。
ある日、店に入ろうか入らないで帰ろうかという感じの人がいました。
よく見ると、2、3日前に、遠くからお店を見ながら通り過ぎていったおじいさんでした。
「プレゼントですか」と聞くと、「うーん」とちょっとはずかしそうに、目を合わさずに、ひたすらカーディガンを見ています。
これから寒くなろうかという秋でしたので、最近の流行もあって、店には七分の袖ばかりでした。
お年寄りの方には気の毒かなと思い「申し訳ありません、これから寒くなるのに、流行で七分ばかりなんです」と言うと、おじいさんは「七分がいいねん」、「おばあが着るやつやから」と照れくさそう。
照れ隠しのせいか口調はきつい言い回しだけれど、一生懸命で真剣な様子がとても伝わってきます。
「実は私は知ってるんですよ。何日も前から奥さんのためにお探しになっていたのは」と言いたいのをちょっとがまんし、「素材はどんなのがいいですか」、そしてお年寄りなので着ごこちの良いのがいいだろうと思い、「綿はいかがですか。こちらはお薦めですよ」と、プレゼントということも考慮し、着回しやすい明るめの生成りのカーディガンをお薦めしました。
「これがいいわ」とおじいさんの顔が明るくなりました。
私は、お客様が宝物を見つけたような幸せそうな笑顔になるこの瞬間が大好きです。
私もポッと心が温かくなり、とても幸せな気分になります。
おじいさんはそこからは堰を切ったようにいろんなことをしゃべってくださいました。
おばあさんは入院していて、手元をすっきりさせたいのに不自由で自分で袖をうまく上げられないため七分袖がよかったことや、入院生活も長いので明るい色を着せてあげたかったこと、病院に行く時このお店の前を通っていくことなどを。
お見送りする時「おばあとまた来るわ」と言ってお買い上げになった生成りのカーディガンをお持ちになり、うれしそうに帰っていかれました。
何日かたっておじいさんとおばあさんが来てくださいました。
おじいさんは始終「これはどうや」「いくつ買ってもいいぞ」と言って楽しそうに選んであげていました。
おばあさんは張り切るおじいさんを見てとてもおだやかにニコニコしていました。
洋服を選んでいる姿は、どんな若いカップルにも負けないくらいラブラブでした。
そんな温かい思い出を心の中に持ちながら今日も売場に立つ私です。
いろんなお客様が来店され、いろんな商品が私たちをつなげてくれます。
店の外では出会えないすてきなドラマがお店の中では生まれてきます。
小さな子供の笑顔を見ながら〈大きくなったらぜひ来てね。その時は楽しい会話ができるよう待っています。毎日毎日すてきなドラマを積み重ねながら〉。
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