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あったか・えっせい

「あったか・えっせい」は、玉屋の所属する社団法人日本専門店協会が主催す るエッセイコンテストです。全国の店頭に立つ販売員から寄せられたお客様と のふれあいや感動の実話を募ったもので、弊社スタッフが応募したエッセイも数々の賞をいただいております。

第07回 2003年度 入賞

思い出のクリスマスプレゼント

(氏名割愛)

接客業に就いて3年が経ちました。
毎日様々な出来事がありますが、その中でも忘れられない出来事がひとつあります。
先日、男性のお客様が1人でベルトコーナーの前に立っているのを見かけて、その3年前の出来事を思い出しました。

その頃の私はこの仕事を始めて間もない頃で、毎日忙しく、少し仕事に対して自信が持てなくなっていました。
それに追い打ちをかけるようにクリスマスの2日間出勤を店長から告げられ、がっかりしながら服を畳んでいると、男性の方が1人、お店の中をうろうろしているのに気付きました。

(何か探しているのかな? クリスマス近いし、彼女にプレゼントかな? でも男のお客様って接客したことないし、どうしよう)と心の中で思っていました。
その様子を見ると、冬なのに額に汗をびっしょりかいていて、とても不安そうに周りをきょろきょろ見ています。
とても落ち着かない様子だったので、思い切って話しかけてみました。
「彼女にクリスマスプレゼントをお探しですか?」と尋ねると、ほっとした表情で「良かった! 婦人服のお店って初めて入ったから緊張するし、何買ってあげたら喜ぶのか分からなくて、今、話しかけてもらわなかったら帰るつもりでいたんです。ありがとう」といきなりお礼を言われてびっくりしましたが、私はなんとかこのお客様の力になりたいと思いました。

お客様は、クリスマス前に彼女に服をプレゼントして、クリスマス当日はその服を着てもらってデートをするというプランを考えていました。
「自分は男だし、どんなのが流行っているのか分からないから、店員さんいっしょに考えて」と言われ、お客様が話してくれた彼女のイメージに合うような服を一生懸命考えて選びました。
インナーを選んでいると、お客様が「今着ている花柄のシャツかわいいね。中に着るのは店員さんのと同じシャツがいいな」と言われて、何だかとても嬉しく思いました。
服も決まり、綺麗にラッピングして、「彼女、きっと喜んでくれますよ」とお品物を渡しました。
お客様は何度も振り返ってお礼をしてくれたので、本当にあの時話しかけて良かったなと思いました。

そしてクリスマス当日、私がいつも通りお店に立っていると、「こんにちは」と誰かが声をかけてきたので、振り返るとあの男性が立っていました。
隣には、あの時2人で選んだ服を着た彼女もいっしょでした。
私は、わざわざお店まで来てくれると思っていなかったので本当にびっくりしました。
私が驚いたまま何も言えずにいると、彼女が「この服、選んでくれたんですよね。今日はどうしてもこの服のお礼が言いたくて2人で来ました。ありがとうございます。それと着ている姿見せたくて来ちゃいました」と笑顔で言われて、嬉しさで胸がいっぱいになりました。
この仕事や自分にさえも自信を持てず、辞めてしまおうかと思っていた時だったので、なんだか救われた気がしました。
私にとってあのお客様がくれた優しさは、最高のクリスマスプレゼントでした。

私たちは日々お客様に品物を提供していますが、本当はお客様からも何か大切なものをいただいているんだなと思います。
その優しい気持ちを忘れず、今の仕事をがんばっていこうと思います。

「あったか・えっせい」のサイトでは過去の入賞作品すべてをご覧いただけます。

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